詩集を編集する楽しみは、読者に届いたときからは想像もできない可能性にひらかれた姿を垣間見ることができることだ。/必要あってさる詩人の詩集を3冊ばかり読む。平易なことば、つまり日常的に口にしたり眼にしたり耳にしたりすることの多いことば、意味の拡がりのなかで、わかりやすい共有ゾーンをしっかりともっていることばによって描かれた心象風景。そうするとその風景は呼んでいる私のなかでそれなりのかたちを取るけれど、〈わかりやすさ〉のもやがかかって、結局どのような風景なのか、遠ざかっていってしまう……。/まちづくり関係の本を2冊ほど。横浜市の都市計画の中心的人物だった田村明氏の『まちづくりと景観』(岩波新書)。そして長野県小布施のまちづくりに関わった建築史家・川向正人氏の『小布施 まちづくりの奇跡』(新潮新書)。/そして今週発売された例の長編を……。(4月15日)
今週の読書(2022年12月29日〜2023年4月7日)
あれこれとしているうちにだいぶ間が空いてしまった。振り返っても仕方ないので今週の読書から。/グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』を図書館の新着コーナーで見つけ、なんとなく手に取る。風景や土地の淡い描写となにかが起こりそうな予感の濃淡の感じが良い。本編への序章なのだろうか、という評を見かけたがそのとおり、続きの出来事を知りたくなる。(2023年4月7日)
今週の読書(2022年12月19日〜28日)
少々調子を崩していたがようやく回復基調、と思ったらもう年末。/ぜんぜん読書進まず。木村敏・檜垣立哉『生命と現実 木村敏との対話』を読んだのがせいぜい。ドゥルーズへの準備運動。/行きがかりで手に入れた『ファウスト 2』を読みすすめる。ゲーテを読むのは初めて、というかドイツ文化圏のものにあまりに触れてこなかった……。/ダレルが届いたのでさっそく読もうと思うのだが、なんとなくカヴァフィスを読むのを先にするべきという気がして、中井訳、池澤訳を比較してみたくなるが、そうすると中井訳をどこにしまったかが問題で……、という具合に一週間ばかり持ち歩いている。/ひとまずの年末の読書として『ドン・キホーテ』の最初の巻を鞄に放り込む……。(2022年12月28日)
今週の読書(2022年12月15日〜18日)
すっかり年末の雰囲気が漂ってきて、落ち着かない。/なにか精緻なもの、密度の高いもの、難しいものが読みたく、ゼーバルトの『目眩まし』を読む。織り込まれているものの大半は何も気がついていないのだろうが、なにか良くできた、何度でも辿る甲斐のあるものを読んでいるという充実感に救われる。会社を休んだ甲斐もある。続けて池内紀編訳の『カフカ短篇集』。「狩人グラフス」が収録されている。/カフカの〈正義〉への強烈な嫌味に感動する。「アメリカ」の冒頭にあたる「火夫」が収録されているが、カールのなんとも馬鹿らしいこと。共感すること多。その後どうなるんだったか、久しぶりに読みたくなる。ストローブ=ユイレの映画も、いくつかのカットがおぼろげに脳裏に浮かぶばかりで記憶が曖昧……。/檜垣立哉『ドゥルーズ 解けない問いを生きる〔増補新版〕』(ちくま学芸文庫)。(2022年12月18日)
今週の読書(2022年11月9日〜12月14日)
いろいろなことがあってしばらく投稿が滞る……。せめて世にも珍しい出来事に遭遇したのなら良かったのだけれど、そんなことはない。/断続的に読み進めてきた『ドン・キホーテ』(岩波文庫)を読み終える。1冊だけ永田訳。僕の生涯で必ず読みたい本のリストの上位にずっと上がっている。こんなおもしろい小説はないとスペイン人の神父から聞いた、と話してくれた方はいまダレルの『アレクサンドリア・カルテット』を読んでいて、この鬱々としたつまらない文章がたまらなくおもしろい、という。/なんとはなしに三島由紀夫を読むタイミングのような気がして手にとった『永すぎた春』をしばらくおいて読み終える。楽しそうで何より……。/遅ればせながら檜垣立哉『バロックの哲学』を。ドゥルーズ論などほかの著書を注文、まとめてこの冬の読書にしたい。/大崎清夏『目をあけてごらん、離陸するから』、とてもすばらしい。/この間、ろくに映画も観ずじまい。罪滅ぼし?に蓮實センセイの講義に足を運ぶ。(2022年12月14日)
今週の読書(2022年10月22日〜31日)
だいぶ間が空いてしまった。このかん、少々記憶があいまいだが詩人に会ったり、メディアアーティストに会ったり、翻訳家と会ったりしていた。/そうするあいだにもゲラの山との格闘は続いていたわけで、本をつくるのに一生懸命になればなるほど本が読めないというジレンマがすぐに生じてしまう。/ふと、もういちどイリナ・グリゴレ『優しい地獄』を手に取ることができて読み終わる。薦めてくれた方の言うとおり、すごい本、みたことも聞いたこともない世界がすぐそこにあり、しかも不思議なうつくしい日本語で物語は語られてゆく。くたびれていて休んだ一日が、病気を経て人生がまた一つ曲がってゆく著者の物語に重なる。/来年は三島由紀夫かなと思って準備運動をはじめている。まずは『小説家の休暇』に目をとおす。過剰な自意識と、なにもかもすっきりと整理して理解してしまうこのひとの性がうまく嵌ると美しい。ジュネ、川端康成など人物のスケッチが魅力的。脈絡ないが次は『永すぎた春』へ。/箱に詰められた蔵書から探しものをしていて森敦『意味の変容』を発掘。異常なる面白さ……。/神田の神保町ブックフェスを少々冷やかし、芸術新聞社のブースから1冊購入。持っているかもしれないのだが……。/いただいた「インカレポエトリ第7号」を断続的に拾い読み。(10月31日)